サルコペニアとは、筋肉量減少に伴う筋力低下や身体機能低下の状態に陥っていることです。高齢者が悩まされやすく、老化による体の変化が原因の一つとして挙げられます。その影響としては、握力が弱くなったり、歩く速度が低下したりといった内容が挙げられ、悪化すると身体機能障害のリスクや要介護状態となるリスクが高まるため注意が必要です。
その診断方法には複数の方法があるものの、主なものとしては、筋肉量減少・筋力低下・身体機能の低下が挙げられます。筋肉量減少に加えて、筋力低下もしくは身体機能の低下のいずれか、あるいは両方を併せ持つ場合に診断が下ります。そして、3つの項目すべてに該当する場合は重症とみなされるのが一般的です。ただし、診断するうえでは人種ごとの体格の差などを考慮したうえで基準を設定し、それに基づいて診断する必要があります。欧米の基準は当然日本人には適さないため、最近では日本人向けの基準が提言されるようになりました。
加齢によるサルコペニアの要因についてですが、実はまだ明確には分かっていません。アミノ酸やたんぱく質の不足、ホルモンや活動量の低下など、さまざまな要因が関わっていると言われています。いずれにしても、低栄養状態がサルコペニアの状態を招くと考えられており、そうなるとさらなる身体機能の低下や筋力の低下を引き起こします。そうして、さらに低栄養状態に陥るという悪循環につながります。
続いて、予防・治療法についてですが、現在サルコペニアに有効な薬剤等はありません。低栄養状態と身体機能の低下などが主な症状の要因であることから、その状態を改善することが治療としては有効な手段です。つまり、体に栄養をきちんと補い、運動によって筋肉量の回復を促します。これらを徹底して取り入れることで、症状の予防や改善が行えます。
そしてもう一つ、近年では、筋肉量が減少することに加え肥満が加わった状態である「サルコペニア肥満」が高齢者の間で増えてきています。肥満は、糖尿病や動脈硬化などあらゆる生活習慣病を引き起こす原因であり、その人の健康寿命にも大きく関わるため注意が必要です。サルコペニア肥満も高齢者が多く陥りやすい状態ですが、早ければ40歳代の人でも起こる症状です。よって予防するなら40歳代から始めておくと安心です。また、間違ったダイエットを行えば、若い人でも低栄養状態となり筋肉量が低下することがあります。このことを考慮すると、若い内から食生活を正しいものへと整える努力をしておくと良いでしょう。
サルコペニア肥満を予防・改善するためには、適度な運動はもちろんのこと、バランスの良い食事が欠かせません。脂肪の取り過ぎを抑え、筋肉の源であるたんぱく質を摂取することが大切です。魚や赤みの肉、乳製品や大豆製品などを適度に摂取するようにしましょう。特に高齢者の場合、たんぱく質の摂取量が低下していることが指摘されています。厚生労働省の調査によると、たんぱく質の摂取量が低下している場合、3年後筋力の低下に影響を及ぼすことが明らかにされています。ゆえに、意識的なたんぱく質の摂取が必要です。
70歳を過ぎた高齢者の場合、特に動物性たんぱく質の摂取量の低下が指摘されています。腎機能が低下している場合は多すぎるたんぱく質の摂取には注意が必要ですが、そうでない場合は「日本人の食事摂取基準」を参考に1日に必要とされる適量のたんぱく質を摂取するようにしましょう。ちなみに、18~70歳以上の男性の場合は1日あたり60g、18~70歳以上の女性の場合は1日あたり50gが目安とされています。
もちろん、たんぱく質だけではなく、その働きをサポートするのに欠かせないビタミンやミネラルなどの栄養素をきちんと摂取することも重要です。さまざまな食品をバランスよく摂取し、健康的な食生活を目指すと安心です。
サルコペニアは新しい分野であるため、今後もさらなる研究が必要です。症状に陥ってしまうと現時点では投薬による治療はないため、それ以外の方法で改善するしかありません。しかし、前述したようなバランスの良い食生活に適度な運動を行うことで、サルコペニアの予防や改善が行えます。加えて、低栄養状態に陥らないためには、口腔機能を良好に保ち続けることも必要です。しっかり噛むことを意識しつつ、早い段階から口腔機能の健康にも配慮すると良いでしょう。そうして体を健康的に保つことは、その人の健康寿命を伸ばすことにもつながります。そして健康寿命が伸びるということは、それだけ医療機関にかかる頻度が少なくなるということでもあります。医療負担減少に繋がることから、毎月の支出を減らすことも可能です。健康でいることは、それだけで数多くのメリットをもたらします。いつまでも快適で明るい毎日を過ごすためにも、今から食生活を見直し、適度な運動など規則正しい生活習慣を取り入れることが大切です。
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