知識機能とは情報をまとめたり枠組みを作り、判断の基準や情報を集約する機能を指します。
これは主に心理学で用いられている用語で、端的にいえば考えて判断する力や、行動における瞬間的な判断、行動の基本となる部分を意味します。
知識機能の低下とはつまり、判断する能力の衰えのことで、考えて理解したり判断する能力が落ちるという意味になります。
人間には物事や自分の置かれる状況を理解したり、言葉を操って表現する能力があります。
計算や学習もやり方を覚えることでできますし、記憶したり問題解決方法を考えて遂行するなども可能です。
このような人間に備わる知的機能の総称が知識機能で、概念を言葉で表したものです。
知識機能の種類には記憶や遂行に言語理解、そして判断能力があります。
これらの機能が低下するとどうなるか、それを考えると物忘れや行動力の低下、言葉の理解間違えや判断の間違えなどが想像できるでしょう。
一般的に知識機能の低下は加齢を主な原因としているので、知識機能の低下とはすなわち高齢化によるものと解釈されます。
高齢者の知識機能特徴は、その前提に機能の個人差が大きいこと、様々な要因が関係したり絡み合っているといえます。
個人差に関わる要素には遺伝やストレス、体調や精神状態に加えて、経験に関わる受けてきた教育や仕事、趣味や人間関係などが挙げられます。
前者を内因的な因子、後者を社会的因子と呼びますから、高齢者の知識機能は加齢という1つの要素だけで決まるわけではないことが分かります。
知識機能老化の症状は、いわゆる物忘れとして知られる記憶障害を始めとして、失語・失行・失認と、遂行機能障害に分けられます。
記憶障害は若い人にも起こり得ますが、物忘れの自覚があれば生理的健忘、物忘れ自体を忘れてしまえば病的な物忘れとなります。
病的な物忘れは時に日常生活に支障をきたしますから、早めに変化に気がついて対処する必要があるといえるでしょう。
失語・失行・失認のうち、失語は言葉を理解できるものの話せない運動性失語と、話はできるのに言い間違いが目立ち内容が理解できない感覚性失語があります。
失行は運動障害が見られない日常的な行動ができなくなる症状、失認は目や耳に問題がないにも関わらず物が認識できない症状をいいます。
失認になると知っているはずの道が分からなくなったり、目的地に向かえなくなるといった問題が生じます。
遂行機能障害は計画を立てたり、物事を計画に沿って実行できなくなるのが特徴です。
このように知識機能老化の症状は多岐にわたり、人によっては影響が広範囲に及びます。
知識機能老化の原因はやはり加齢によるもので、歳を取れば誰でも知識機能の低下が起こり、物忘れや言い間違いなどをするようになるものです。
知識機能の衰えが顕著に見られるのは60歳以降で、健康な人でも少しずつ機能が衰えて知識機能老化の症状が現れるようになります。
加齢以外の老化の要因には、神経の変性や脳疾患、感染症といった老化現象や病気の影響があります。
神経の変性はアルツハイマー病やピック病、レビー小体型による認知症で、神経変性疾患に分類されます。
脳疾患は脳梗塞や脳出血が代表的で、感染症にはクロイツフェルト・ヤコブ病が当てはまります。
他にも、甲状腺機能低下症やビタミンB12欠乏症、脱水といった内科系の疾患、統合失調症やうつ病の精神疾患も知識機能を老化させます。
抗不安薬や睡眠薬、抗うつ薬を服用している人は、薬剤の影響で知識機能の老化が進行することがあります。
知識機能の低下とは何かを改めて考えると、状況を認識したり考えを言葉で表すこと、計算や記憶、問題解決などの能力が落ちることだと理解できます。
物忘れは年齢に関係なく誰にでも起こりますが、著しい機能の低下が見られたり、日常生活に影響が出て6ヶ月以上続くようであれば、一過性ではないと判断されます。
知識機能老化の原因は加齢が大きいので、知識機能の低下は高齢者に起こりやすいわけです。
ただし個人差があるのでどこにどのような影響が及ぶかは、人によってケースバイケースとなります。
一般的な加齢による知識機能の変化は、社会文化的経験で得たものは比較的良好に保たれ、新しい環境に適応する能力は低下する傾向です。
経験が高齢になっても活かせるのは、教育や学習を経て積み上げられてきた社会文化的経験です。
しかし、今まで知らなかった新しい概念や考え方を理解するのは難しくなり、そういう部分では経験が活きにくくなります。
理由は加齢による脳の処理速度の低下で、問題解決の課題に挑戦したり遂行することや、瞬間的な反応や判断が苦手になっていきます。
加齢で気をつけたいのは、知識機能老化による症状で、記憶障害と失語・失行・失認に遂行機能障害です。
軽い物忘れ程度で、それを認識していればメモに残すなどで対処できますが、物忘れの自覚までなくなると大変です。
失語・失行・失認はコミュニケーションや日常生活に大きく影響しますから、これらに気をつけながら、いつまでも健康的で元気に暮らせるようにすることが大切です。