現代社会において様々なシーンでデジタル化が急速に進んでおり、「デジタルファースト」という考えが注目されるようになっています。また世界的に感染拡大した新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、医療機関ではオンライン診療が導入されたり、イベント開催ではインターネット配信が活発に行われビジネスでは働き方の多様化に伴い、リモートワークの促進がされるなど日本社会のデジタル化はさらに進められています。
行政手続きから日常生活まで幅広く取り入れられてきている、「デジタルファースト」の特徴やメリット、ビジネスへ導入にあたっての注意点などを解説していきます。

まずデジタルファーストが持つ意味は、元々新聞や雑誌、書籍など印刷物として提供されていた紙媒体の情報を、電子出版の形式で提供することを指していました。しかし近年はビジネス上的には、デジタル化を優先して業務を行っていくことを意味する言葉として利用される機会が増えています。
デジタルファーストと似た考え方の1つに「クラウドファースト」があり、これは情報システムを導入・更新する際に運用基盤としてクラウドサービスの利用を優先的に検討することを意味する考え方であり、デジタルファーストではクラウドファーストを含む考え方です。
実際にビジネス上でどのようにデジタルファーストが取り入れられているのかというと、従来1つの部屋に多くの人が集まる必要が合った会議を、オンライン上で遠方にいる人も参加可能にするWeb会議の導入であったり、書類のペーパーレス化、そして情報基盤の統一など様々なデジタル化が挙げられます。

また行政手続きにおけるデジタルファーストとして、2019年12月には「デジタルファースト法」が施行されており、国や地方公共団体、民間事業者、国民その他の者があらゆる活動において情報通信技術の便宜を享受できる社会の実現を目指しています。
行政におけるデジタルファーストとは、行政手続きやサービスが一貫してデジタル上で完結していることを意味します。例えば引っ越しに伴い住民票の移動手続きをネットで行なうことで、その情報を元に電気やガス、水道に銀行口座などの契約変更ができたり、相続や死亡の申請、法人設立の申請をネット上で全て行えるようにするといったものが挙げられます。

では起業におけるデジタルファースト導入にあたって得られるメリットは何があるかとうと、大きく分けて業務効率化とコスト削減の2つです。まず業務効率化では、従来の業務を全てアナログで行ってきた場合全てデジタル化することで、今までかかっていた時間と手間を大幅に減らし、業務効率を向上させることが可能です。今までは過去の情報を調べたい時などに直接資料室に行き、大量の資料の中から必要な情報を探し出していた作業も、資料をデジタル化することで情報の検索や社員同士の共有が容易に行えるようになります。

大きなプロジェクトを進行している場合も、タスク管理をデジタルで行いメンバー同士で互いに仕事の進行度を見える化することで、スムーズにプロジェクトの進行が行えるようになるため業務効率化を実現すれば、社員の生産性向上につなげることも可能です。

コスト削減では、資料や契約書、請求書など今まで紙で作成されていた書類を電子ファイル化するペーパーレス化を導入することで、紙やインクといった備品代であったりプリンタの定期的なメンテナンス費用を節約できるなど大幅なコスト削減につながります。また膨大な書類を保管するための保管場所も削減できるので、スペース有効活用が行えるようになります。

ビジネス上で様々なメリットがあるデジタルファーストですが、実際に導入する場合には注意点もしっかり把握しておくことが重要です。デジタルファーストは全ての業務をデジタル化すると、業務が複雑になったり難易度が上がったり、業務効率が低下してしまう原因につながるので、本当にデジタル化が必要なのか業務の効率化や費用対効果の面からも慎重に検討することが大切です。

また自社だけで積極的に業務のデジタル化を進めても、取引先でデジタル化が進んでいない場合効率的な連携がとれない可能性が高いです。あくまでもデジタルファーストは考え方・概念であり、導入するにあたって明確な目的を持って行なうことが大切です。

注意点は他にもセキュリティ対策はとても重要なポイントであり、ファイルの管理や共有をインターネット上のクラウドサービスを介して行なう場合、ユーザー権限やパスワードの設定を厳密に行わないと第三者からのアクセスも容易にしてしまう危険があります。

ウイルス感染やサーバー攻撃による情報漏洩は会社の信用を損ない、最悪存続問題にも発展してしまいます。セキュリティ対策ソフトの導入はもちろん、社員研修を行い社員のセキュリティ意識を高めるなど多方面からの万全なセキュリティ対策を行なうことが必要です。