地方で生まれ育った子どもたちが進学や就職を機に都会に出て、退職した後もそのまま都会で住み続けることが多くなり高齢の親だけが地方に残るという場合がほとんどです。そして地方から出てきて都会で結婚をし、そこで子どもたちを育てた年代の人たちがやがて子どもが独立して夫婦二人暮らしとなり、やがてどちらか一方が亡くなって一人暮らしになるというパターンもどんどん増えてきていて、高齢者の一人暮らしは地方在住の人だけではなく都会でもどこでも全国的に増えています。

2017年の厚生労働省の調査によると、65歳以上の独居世帯は627万4千世帯ありました。また夫婦がそろっていても両方とも65歳以上の世帯は643万5千世帯となっています。その後も65歳以上の高齢者世帯は増加しているのです。
夫婦が一緒に暮らしていても、やがてどちらかが一人になるときが来ます。すると孤立してしまう可能性が出てきます。近所で話せる人が誰もいなかったり、困ったときに相談できる人がいないと寂しい余生を送らなければいけなくなってしまいます。

高齢者孤立の原因は一人で暮らしているからという理由は大きいですが、それでも友人や知人がいたり地域とのつながりがあればそれほど孤立する心配はありません。しかし特に男性の場合は、勤めていたころに近所や地域とのつながりがない場合が多く、退職してから積極的にサークル活動などに参加しなければ孤立してしまう可能性があります。女性でもあまり社交的でなく外に出ていくことが苦手な場合は、孤立してしまいます。
それに外に出たくても健康状態が良くないことで、外出がしにくくなって家にこもってしまうこともあります。外に出て誰とも合わないでいると、気にかけてくれる人もどんどん少なくなり孤立しやすくなってしまいます。

夫婦別離や未婚者も孤立しやすくなります。離婚をして子どもがいると仕事と育児の両立で毎日が忙しいため地域との交流を持つ機会が少なくなったり、離婚をしていることで他者とコミュニケーションを持つことを拒んだりすることが多くなるからです。未婚の場合は親と一緒に住んでいたとしても親は先に亡くなってやがて一人になってしまい、それまで地域との交流は親がしていたものを急に自分がしなければならないとなると戸惑いを感じたり、拒んでしまうことが多くなります。未婚で一人暮らしをしていたとしても、地域や近所との交流は取りにくいパターンが多いです。
さらに経済的理由で暮らしが苦しいと、人との付き合いもお金がかかるとの理由でしたがらないケースが多くなります。何かのサークルに入りたくても会費を払ったり材料をそろえるなどのことができなくてどこにも所属できず、孤立してしまうこともあるのです。

それに周囲の人に頼らなくても生活できるような都会に住んでいる場合も、人に頼らず周囲の人とかかわりを持たずに暮らしていた場合は、孤立してしまうこともあります。
これらのように地域や友人との付き合いがないまま一人になったり、健康状態や経済状態が悪くて人との付き合いをしないことが孤立しやすい特徴です。

高齢者が孤立すると、様々な問題が生じてきます。地域の人とのコミュニケーションがないと情報を知る機会がないので、詐欺に遭うなど消費者トラブルに巻込まれる可能性が高いのです。それは情報が入ってこないだけでなく、普段人と話す機会がないので、相手が詐欺師とも知らず会話を楽しんでしまったり相手の言うことをまじめに受けたりすることも原因としてあります。

孤立による問題として、生きがいを感じないということもあります。家の中で一人でいると、自分から言葉を発しても誰も答えてくれません。テレビで良いドラマがあっても、それを話して共感してくれる人もいないのでつまらない日々を送っていくことになるのです。自分を必要としてくれる家族や友人がいないことを自覚すると、何のために生きているのだという気持ちにもなってしまいどんどん生きがいを失っていきます。
毎日少しでも誰かと会話をすることはとても大切なことです。また自分を頼りにしてくれる子どもや友人がいることも生きている中で存在感を認められる瞬間です。そのような気持ちや楽しみがない中で日々を孤独に暮らしていると、ますます顔から笑顔が消えて表情が乏しくなったり健康を害したりして、病気や認知症になる可能性がとても高くなってしまうのです。

そして一人暮らしの高齢者が増えて、地域や社会とつながりが持てず孤独な人が増えてくると孤独死の増加も懸念されます。人との付き合いがなく毎日家の中にいるので、周囲の人が訪ねてくることも気にかけてくれることもなくなってきます。すると突然家の中で倒れて誰にも看取られることなく孤独に亡くなり、誰も気づかないまま時間が経過してしまうのが孤独死です。一人で暮らしていても友人や地域の人、家族たちと交流があればたとえ家の中で一人で亡くなっても早く気づいてもらえますが、周囲とのコミュニケーションをとらずに孤独に暮らす人が増えると孤立死の増加につながります。