近年では人生100年時代とも言われるようになり、70代や80代になっても、元気に活発に動いているお年寄りが非常に増えてきています。とはいえ人間は年齢を重ねるごとに確実に衰えていくものであり、高齢になった親の健康状態を心配する人も多いかもしれません。高齢者にできる限り長く健康でいてもらうためには様々なことが重要となりますが、その中でも一番注意しなければならない事が低体重、つまりは痩せてしまうことです。太り過ぎは生活習慣病などの原因にもなるため気をつけている人も多いかもしれませんが、実は痩せすぎていることも健康リスクが非常に高まり、近年では高齢者の痩せが危ないともいわれています。

日本では60歳を過ぎて70や80代の高齢になると、年相応に少ない量を食べれば良いだろうと食事の量を落としてしまう人が多く見られます。さらにはあっさりとしたものを好むようにもなり、噛みにくい繊維質の野菜や固い肉などは避けがちになります。食べやすいものに偏った食事を続けるようにもなり、体を維持するために必要となる栄養素は不足し、低栄養状態に陥ってしまいます。食事の量を落とせば当然のことながら体重も落ち、その後筋肉量も落ち、運動機能が低下し、このような悪循環に見舞われることになります。低栄養になれば体には様々な支障をきたすことになり、例えば筋肉量の減少や筋力の低下、運動機能の低下、骨が弱くなって骨折しやすくなる、免疫力の低下によって風邪や感染症にかかりやすくなるなどの、様々なリスクを背負うことにもなりのです。その他にも傷が治りにくくなったり、認知機能の低下も見られることもあるでしょう。このような状況が長く続けば、寝たきりの原因にも繋がってしまいます。

なぜ高齢者が低栄養になってしまうのかと言うと、食事量の減少や運動量の減少をはじめとし、味覚機能が下がったり、噛む力や飲み込む力の低下など、加齢が原因となるものが多く見られます。その他にも病気や薬の副作用であったり、社会との接点が少なくなることによる孤独感なども原因の一つに当てはまるでしょう。これらの原因が重なる事によって、さらに食欲が失せ、悪循環に陥り症状が悪化する可能性もあるのです。

低栄養であるかどうか見た目ではわからないと思う人も多いかもしれませんが、いくつかの判断基準が設けられています。まず体重減少率の数値により程度を判断することができるでしょう。ダイエットをしていないのにも関わらず、半年間の間に体重が2から3kg減った、3%以上の体重減少があった場合には注意が必要です。そして肥満度を表す指標であるBMIでも求めることができるでしょう。BMIが22になった時の体重が、一番病気になりにくいとされています。

高齢者になり痩せることがなぜ危険なのかと言うと、それは筋肉量が減り筋肉減少症などにつながりやすいからです。運動機能に支障をきたすほどに筋肉が落ちてしまう現象のことを指しています。また虚弱に繋がることも関係していて、運動機能だけではなく認知機能も衰えてしまいます。つまり要介護や寝たきりの一歩手前のような状態です。痩せて体重が落ちればこのような衰えが進みやすくなり、転んだ際の骨折のリスク、肺炎のリスクが大きくなります。低栄養で痩せている高齢者は骨折や肺炎にも陥りやすく、これらは高齢者が救急車で緊急入院する理由の半分近くを占めているのです。痩せていると入院すること自体が大きなリスクにもなるでしょう。痩せた高齢者が衰えが進行し始めた状態で入院すれば、高い確率で身体機能や嚥下機能、認知機能がさらに低下することになります。高齢者が入院すれば基本的にはベッドの上で安静にしながら、検査や治療を受けるために食事も制限されることになるでしょう。口からの食事を止められるのが一般的であり、動くこともなく食事も満足に食べられない状況が続くうちに、どんどん衰弱が進んでしまうのです。

このようなことを予防する対策は、何と言ってもしっかり食べることと言えるでしょう。しっかり食べることができれば体重・筋肉量を保つことができるため、もしも痩せてきていると心配になった場合には、体重を増やすことを意識しましょう。健康な体を維持するためには、身体を作るために欠かすことのできない栄養素をバランスよく摂取することを心がけたいところです。その中でも炭水化物は体を動かすエネルギー源にもなる為、しっかりと摂取することを心がけましょう。1日に必要となる炭水化物の量は、年齢や活動量などによっても異なるものの、摂取目標量は1日に必要なエネルギー量の50から65%ほどとされています。そしてタンパク質は筋肉や内臓、骨や血液などを作るもとになるため、非常に重要です。タンパク質が不足すれば筋肉量も下がり、運動機能や活動量の低下、骨が弱くなるなどのリスクが伴います。そして体の最も効率の良いエネルギー源である脂質もしっかりととることが求められます。体の機能を調整する役割のあるビタミンや体の構成成分になり、体の機能を調整するミネラルなどもしっかり摂取するようにしましょう。